「課題の解消」が従業員満足度向上の近道か?
従業員満足度向上活動をしていると、「社員の課題を解決すれば良い!」と言う方が意外に多い。そういう人の話を聞いてみると「社員は解決できない(し辛い)課題を不満に思っている。だから、課題を解決すれば満足度は向上する!」と力説される。
もちろん、間違っているとは思っていない。課題を解消してあげれば、満足を感じることができる。従業員満足も向上するだろう。非常に分かりやすいし、社員にも伝わりやすい。
しかし、会社が「課題の解消」を行うことには、メリット・デメリットがある。今回は、この「課題の解消のメリット・デメリット」をあげていきたい。担当している方は、メリット・デメリットをはっきり認識した上で、実行に移してほしい。
「課題の解消」のメリット
対応内容が明確
第一のメリットは、対応内容が分かりやすく明確であることが言える。社員に、アンケートなりヒアリングなりをすれば、様々な課題が浮き彫りになる。課題の大小は有るかと思うが、これを1つずつ解決していけば良いと言える。
そのまま対応してしまっては、表面的な解決にしかならないと思うなら、一つひとつの課題について根本原因を考えながら対処すれば良い。課題に感じている人が理解できる程度の根本原因にアプローチしていけば、社員の納得感も高くなる。この場合、言われたまま解消する場合と比べて、効果が高くなることが予想される。
即効性がある
簡単には解消できない課題を社員が抱えている場合、それは不満につながる。このようなな課題を、会社が代行して解決していけば、その分だけ不満が解消され満足度は向上する。効率よく、次々と解決すればV字回復も可能と言える。
前出の「わかりやすさ」と「即効性」は非常に魅力的だ。これで、従業員満足を向上させようと考える気持ちも分かる。分かるが、ここは焦らずデメリットも含めて考えてほしい。
「課題の解消」のデメリット
底なしの不満
前出でも「不満」という表現をしたが、これは「課題」と「不満」は表裏一体の関係にあるからだ。次々と発生する課題を無難に解決できるのであれば、不満も溜まりづらいだろう(課題の数にもよるが…)。しかし、解決しづらい課題が発生すると、不満につながりやすくなる。
人が満足を感じるためには、不満を解消する必要がある。逆に言えば、不満が全くない人は満足も感じていないと言える。人によっては、不満はないが満足しているという人もいるだろう。そういう人は、気づかないうちに自ら不満を解消している。
これらを前提に考えると、社員に満足感を与え続けるには課題を解消し続ける必要がある。また、社員は課題を発生させ続けなければならない。いつまで経っても、課題がゼロにはならないということだ。
しかも厄介なことに、小さな課題を解決していくと、必然的に課題は大きくなっていく。大きな課題は、解決に時間もかかる。大きな課題に取り組んでいると、小さな課題が滞留する。小さな課題を解決していると、大きな課題を解決する時間が取れなくなる。にっちもさっちもいかなくなってしまう。
しかも厄介なことに、小さな課題を解決していくと、必然的に課題は大きくなっていく。大きな課題は、解決に時間もかかる。大きな課題に取り組んでいると、小さな課題が滞留する。小さな課題を解決していると、大きな課題を解決する時間が取れなくなる。にっちもさっちもいかなくなってしまう。
課題の解決能力の低下
会社が「課題を解消」するとこは、すなわち社員が課題を解消するチャンスを奪っていると捉えることができる。チャンスを奪うということは、社員が課題を解決する経験ができないということだ。課題を解決する経験ができなければ、社員が課題を解決する能力は低下してく。
社員全員がストイックなアスリートの様な人だったら、能力が低下することはないだろう。ストイックなアスリートは、自らの限界にチャレンジし続ける。より大きく難解な課題に取り組み続けて、課題の解決能力は向上する。しかし全社員のうち、このようなアスリート社員は極々一部なのではないだろうか。
ごく普通の社員であれば、会社に解決してもらう課題の大きさは、徐々に小さくなっていく。課題が小さくなっていくということは、小さい課題すら解決する経験を積まなくなってしまう。行き着く先は、「すべての課題は会社が解決」といった状態だ。
従業員満足が頭打ちになる
これまでの話で、「課題の解消」を続けると、小さな課題から大きな課題まで、すべての課題を会社が解決しなければならなくなると、話してきた。会社が大小に関わらず、全ての課題を解消することは不可能だ。
課題の解消を始めた頃は、徐々に課題が減っていき満足度も上がるであろう。しかし、課題の解決能力が下がり始めると、課題が発生する頻度が高くなってくる。課題を解消する速度をあげても良いが、限界が有るだろう。この状態に達すると、満足度の向上が緩やかになってくる。
やがて、「課題が発生する頻度」と「課題を解消する速度」が同じになる。幾ら解決しても、次々と課題が発生する状態だ。この状態になると、満足度の上昇は頭打ちになる。
頭打ちになっているだけならまだ良い。やがて「課題の発生する頻度」が「課題を解消する速度」を超え始める。課題を解消し続けても、課題が増え続ける最悪な状態だ。予想通り、満足度は低下していくだろう。
やり方次第
これまでの話で、まるで私が「課題の解消はやるべきではない」と言っているような感じを受けるかもしれないが、実はそうでもない。これまでの話を総合的に考えても、有効に利用する手段はある。
とにかく会社が緊急事態な場合は、課題の解消から始めるべきだ。従業員満足が極端に低下し、次々と社員が辞めていってしまう。こんな時は、とにかく社員が考えている課題を、会社と一緒になって解決していくことを推める。全力で取り組めば、∨字回復も不可能ではない。
緊急事態ではない場合であっても、社員の課題解決能力を引き上げながらかつ会社が課題を解消する方法がある。小さな課題から社員がチャレンジできそうな課題までは、社員に課題を解決するように動機づけする。とても社員だけでは解決できない課題については、会社が解決するようにすれば良い。
どこまでが社員がチャレンジできそうな課題なのかを、客観的に判断するところが難しい。チャレンジとなる課題が、人によって異なるからである。しかし、従業員満足度が向上し前向きな社員が増えてくれば、自らチャレンジとなる課題を選択できるようになるはずである。
会社側は様子を見ながら、課題の大きさや難しさを引き上げる。これによって、社員が解決する能力が向上し、なおかつ会社が解決する課題の数が減っていく。最終的には、課題は社員が解決する風土となっていくであろう。
言い方が悪いかもしれないが、会社は社員を甘やかすのではなく、社員の成長を促すアプローチをするべきである。会社の成長は、売上でも利益でも従業員数でもなく、社員の成長と捉えることが、従業員満足度を向上させるポイントとなる。
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