第四回 従業員満足度向上活動 前準備編

前回までは、従業員満足度向上の考え方についてあげてきたんだよ。従業員満足度向上を目指すなら、社員自身が変わらなくてはならないって事が結論だったんだ。今回からは従業員満足度を向上させるやり方について説明して行こうと思うんだ。このやり方を通じて、社員が変わって会社が変わることを目指していくよ。

従業員満足度向上活動の全体の流れ

従業員満足度向上活動ってそもそもどんな感じなの?って調べてみても、特に有名なフレームワークがあるわけじゃないので、せっかくだからここでいっその事フレームワークを作ってしまおうと思うんだ。多少荒削りの部分があると思うので、時間と共にブラッシュアップできたらって思うんだ。

  1. 選抜メンバーによる従業員満足度向上に関する「会社の課題」の発見
  2. 社長による従業員満足度向上活動開始宣言
  3. 従業員満足度向上ワークグループの立ち上げ
  4. 従業員満足度向上ワークグループのメンバー募集
  5. アンケートによる従業員満足度の計測
  6. 従業員満足度向上ワークグループによるアンケート結果の本質分析
  7. 従業員満足度向上ワークグループによる施策の検討
    1. 作業環境に関するモノ
    2. 事業方針に関するモノ
    3. コミュニケーションに関するモノ
    4. 上司部下の関係性に関するモノ
    5. 自己実現に関するモノ
  8. 従業員満足度向上ワークグループによる施策の実施
  9. 「アンケートによる従業員満足度の計測」に戻る

このフレームワークを繰り返す中で、「従業員満足度向上の考え方」を押し付けずに植え付けて行くんだよ。

このページを見ているって事は、たぶん会社で従業員満足度を向上させようって活動の担当をしているか、従業員満足度の向上が必要だと思っている人が見ていると思うんだ。以後は、従業員満足度向上の担当が決まっている前提で話を進めていこうと思うんだ。もし、担当が決まっていないなら、責任者と担当者を決めてほしんだ。

責任者はできるだけ権限を持っている人(幹部社員や役員)を従業員満足度向上の責任者にしてほしんだ。会社全体で従業員満足度を向上させようとしている状態ならともかく(と言うか…その状態にあったら従業員満足度向上活動は必要ないかも…)、そうでない場合に権限のない部署が活動しても全社的な変革につながり辛いんだよ。

担当者は、色々と意見を持っている人が本当はベストなんだけど…そういう人に限って現場で重宝がられているんだよね。現場の人を選びづらいなら、現場を経験した事のあるコーポレート部門の人とか、コーポレート部門でもフットワークの良い人を選んだらいいと思うんだ。

と言うわけで社長の開始宣言の前に…

会社で従業員満足度を向上させようとして、陰でコソコソはじめても社員たちが意識するのに時間がかかったりしちゃうんだ。だから、「会社で従業員満足度向上活動を始めます」の宣言を社長の発言として、社員たちとコミットメントする必要があるんだよ。これはISMS(インフォメーション・セキュリティ・マネージメント・システム)で、社員にセキュリティの意識を持ってもらうために社長宣言をするのと同じなんだ。

でも、社長宣言をするにも、従業員満足度に関して社内にどんな問題があって、どんな会社を目指すのかが分からないと社員とのコミットメントが出来ないと思うんだ。そこで、まずは社内から社員を選抜して、「社内の問題」「問題の原因」「どんな会社にしたいか」を議論してもらう必要があるんだよ。ここでポイントになるのは、「社長の想いではない」って事なんだ。社長の主観的な想いを社員に伝えても結局やらされ感が拭えずに、自ら満足を求める組織にはならないんだよ。

討論会を開催する

討論会を開催するんだけど、どのくらいの規模で開催すればいいのかって話が有るよね。参考になるか分からないけど…以前、僕の会社で開催した時は社員が400名位で40名位集めたんだよ。10分の1って事だね。でもこれが社員5000名で500名集めるとなると、現実的じゃなくなっちゃうかもしれないけど、その場合はある程度の部署単位で開催したらいいと思うんだ。

討論会は合宿形式で開催するのをお勧めしたいんだ。合宿形式で開催すると、職場と離れるので討論に集中できるし、参加者のコミュニケーションを向上するので本音による議論が期待できるんだ。もちろん、幹部社員(社長や役員)の方々は議論に参加する必要は無くて(むしろ、参加してはダメで)、一般社員だけで自由に議論してもらうんだよ。もし、それは難しいって事なら、せめて会議室に缶詰になって、職場から隔離してほしいんだ。

集めたメンバーは5~6名のグループに分けるんだよ。これは、多すぎると意見を言わない人が出てきてしまうし、少なすぎると視野狭窄に陥ってしまうからなんだ。僕は社内で散々ファシリテーター(後述)をやっているけど、1グループ5~6名が一番盛り上がってまんべんなく意見を貰えるんだよ。おおいに盛り上がって、たくさん意見を聞きだしてほしんだよ。

あと、参加者とは別にファシリテーターを準備する必要があるんだ。ファシリテーターって言うのは、会議の進行役のことを言うんだよ。でも司会者とは異なるんだ。ファシリテーターは会議の流れをコントロールする人の事で、議論の発散・集約やまんべんなく発言を求めたりするのが役割なんだよ。ファシリテーターを各グループに1名ずつ立てて、5~6名のメンバーで議論を進めていくって事なんだ。あくまでもコントロールする人なので議論に参加しちゃわない様に注意する必要があるよ。

で!じゃどうやって議論を進めていくかって言うと、「ブレイン・ストーミング」と「フィットギャップ分析」を使うんだ。

ブレイン・ストーミング

ブレイン・ストーミングと言うは、以下のルールのもとに、議論を進める手法なんだよ。

  • 判断・結論を出さない
  • 粗野な考えを歓迎する
  • 量を重視する
  • アイディアを結合し発展させる

基本的に考えを発散させる手法なんだけど、「量を重視する」を外せば集約にも使える手法なんだよ。ブレイン・ストーミングで利用する道具はホワイトボードとマーカーが有れば良いけど、付箋紙が有ればより良い感じなんだ。ファシリテーターはメンバーの意見を同じような内容でグルーピングさせながら進めていくんだ。ホワイトボードにマーカーで書きながら進めていると、意見を他のグループに移したい時に、書き直す必要が出てきちゃうんだ。そんな時に付箋紙があると、貼りなおすだけで済むんだよ。

フィットギャップ分析

フィットギャップ分析は3段階で議論を進めていく手法なんだ。まず初めに「現状の問題点・良い点」を洗い出すんだよ。これで現状の把握をメンバーで共通認識にするんだ。その後で「理想の姿の検討」をするんだ。メンバー全員で今の会社をどのような状態にしたいのかを共通認識にするんだ。そして最後に、現状と理想を突き合わせてそのギャップから、「課題の発見」をするんだよ。ちなみに問題と課題の違いは、問題は解決すべき状態で課題は解決すべき事柄だよ。課題はさらに問題に成り得るから、それで本質の課題に近づくことが出来るんだ。

フィットギャップ分析のそれぞれの段階でファシリテーターは、発散と集約をするようにメンバーをコントロールするんだ。メンバーに意見をたくさん出してもらったら(発散)、同じような内容のモノをグルーピングしてグルーピングした物を一言で表せる文に書き換える(集約)をやってもらっていくんだよ。集約結果は1つである必要は無いよ。でも、たくさんありすぎてもポイントが見えないので、2~4個くらいになるまで集約してもらってね。繰り返し言うけど、ファシリテーターは議論をコントロールする人だから、議論に参加しちゃわない様に注意してね。

復習すると…フィットギャップ分析の「現状の問題点・良い点」「理想の姿の検討」「課題の発見」をブレイン・ストーミングを使って「発散」「集約」していくんだ。

「課題の発見」まで終わったら、是非やってほしいことがあるんだよ。それは、キャッチコピーの検討なんだ。キャッチコピーはホスピタリティで言う述語的な表現にしてみてほしいんだ。ここで決めたキャッチコピーは後述する、社長によるコミットメントで利用するんだよ。

と…やり方が分かったところで、議論するにもテーマが無いと議論が出来ないよね。

テーマが無いと議論できないでしょ?

テーマは「会社として従業員満足度が高い状態になったときを想像した抽象的な言葉」を基にした述語的なテーマにすると言いと思うんだ。例えば「元気な会社を目指す!」でも良いし、「気持ちいい会社にするためには?」でも良いと思うんだ。「!」だと押し付けがましいので「?」の方が社員に聞いている感があって良いかもしれないね。

これで、従業員満足度をテーマにして、一部の社員(選抜)から従業員満足度に対する現状・理想・課題が表現できた状態になるはずなんだ。この情報を基に、社長のコミットメントを作成して行くんだよ。今回はここまでにしておくね。次回は、社長によるコミットメントの話だよ。