『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』を読んでみたよ

今回、紹介する本は『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』なんだ。以前紹介した『信頼の構造: こころと社会の進化ゲーム』と同じ筆者の、山岸俊男さんなんだ。と言っても、『信頼の構造』とは大違いで、すごく親しみやすく読みやすい本なんだよ。

目次は以下の通りになってるんだ…

  • 第1章 「心がけ」では何も変わらない!
  • 第2章 「日本人らしさ」という幻想
  • 第3章 日本人の正体は「個人主義者」だった!?
  • 第4章 日本人は正直者か?
  • 第5章 なぜ、日本の企業は嘘をつくのか
  • 第6章 信じる者はトクをする?
  • 第7章 なぜ若者たちは空気を読むのか
  • 第8章 「臨界質量」が、いじめを解決する
  • 第9章 信頼社会の作り方
  • 第10章 武士道精神が日本のモラルを破壊する

読んでみると分かるけど、書かれている内容は『信頼の構造』と大きくは変わらないんだ。でも、書かれた時期が後なだけあって、『信頼の構造』では先送りにされていた部分が載っているんだよ。そういう意味では、『信頼の構造』を読んだ人でも読む価値があるんだ。

従業員満足度向上活動をしていて、一番の悩みは「社員が本気にならない」ってことなんだ。前回読んだ「影響力の武器」は、内発的動機付けのヒントになるってことだったんだ。今回の本も、従業員満足度向上活動について大きなヒントが得られたんだよ。

それは、「なぜ本音を言えないのか」ってことなんだ。従業員満足度の大きな要素のひとつに信頼関係があるんだけど、やっぱりお互いに本音を言い合わないと、なかなか信頼関係を作るのは難しいんだよ。ワークショップでファシリテーターが「本音を言いましょう」って言っても、参加者は様子をうかがって結局本音を言わないことが多いんだ。

(本の内容の話になるけど…)

日本人は「みなのために行動する集団主義者」のイメージが強いと思うんだ。だけど、筆者は実験を通して「実は日本人の本質は、自分のことを最優先する個人主義者」だと言っているんだ。「みなのために行動すべき」と考えている人は多いけど、「みなのために行動したい」って思っている、利他主義・献身主義の人って感心はするけど「そうしたい」とはなかなか思えないよね。

それに、これだと「日本人は本音を言える人」ってことになるけど…そうじゃないよね。

自分が本音を言おうとするときに、葛藤することってないかな。「こんなこと言っていいのかな?」「こんなこと言ったら、目をつけられるんじゃないか?」とか…ためらわずに言える人って少ないと思うんだよ。つまり、「日本人の心は個人主義だけど、周りの評価が気になって、集団主義的な行動をしている」ってことなんだ。

こうなってくると、「日本人は正直者」って定義も怪しくなってくるよね。だって、本音を隠すってことは、自分自身に嘘をついていることになるからね。

そんな本音を言えないで「風通しが悪い」って思われている組織を改善するヒントが「臨界質量」にあるって、筆者は言っているんだ。

長くなってきたから、ここらへんにしようかと思うんだけど、従業員満足度に関連して勧めると、社内に何かしらの風土を根付かせたいと思っている方は、ぜひ読んでみてほしいんだよ。